怨恨（うら）みて散る

映画『イノセンス』に関する、押井守氏のインタビューの中で、彼は「"うらみ"ってじつはいい言葉だと思ったんですよ。『未練』とか『思いを残す』っていう言葉になると思うんですよね。"思いを残す"っていうふうなことが、今回のテーマなのかなあというふうに思ったので」と言っていたのですが…。
でもって、今日の日記タイトルにしたような詞も、メインテーマの曲の歌詞に入ってるんですね。そこでふと。
では、思い残すことが、なくなったら。
うちの職場の同僚のT(2)さんが、今日、話していたこと。彼女の担当患者さんで、いままで散々、錠剤が大きいだとか苦いだとか、いやだ、のみたくない、等々のわがままを言って彼女をたいへん困らせていた人がいたのですが、先週末に会ったとき突然、「わがままばかり言って、迷惑をかけたわね」というようなことを言ったそうです。T(2)さんは「いいえ、全然そんなことないですよ」と答えながらも、急にどうしちゃったの？と内心びっくりしちゃったんだって。そして、週明け、出てきてみたら、その患者さんは昏睡状態に――。もう一人の同僚T(1)さんは、私たちよりもこういうターミナルの患者さんとの付き合い（？）経験が長い人で、「ああ、そういうことって、よくあるよ。こないだのAさんなんか『もう痛みも取れて楽になったよありがとう』なんて言った翌日に亡くなったもん…」と言っていました。
あと、『おたんこナース』（佐々木倫子）にも、「恨んでやる〜〜」って言う患者さんの話があったんですよね。それを思い出したりして。

ただし。いまちょっと読み返してみて思ったことは、思い残すことがなくなって死を迎える、ということと、思いを残すということは、必ずしも反対のことでは、ないなってこと。例えば後に残る家族に対して幸福であって欲しい、という思いを残していても、自分自身については思い残すところがない、というのは両立しうる。よね…。