ISBN:4862632068 単行本 Unit Vanilla リブレ出版 2007/07 ¥893

その、2を読んでるときにたまたま聞いてたって書いた『Charch Heathen』ですが、「forgiving(赦し)」っていう単語だけ聞き取れたので、どういう歌詞なんだろうと思って検索したらですね、「やつらは赦しなんて求めちゃいないのさ」っていうような意味のフレーズだったらしいんですよ。…え。赦しがテーマの話を読んじゃいたが、…そんなこと言われてるとは思ってもみなかった(笑)。(いや、私に言ってる訳じゃないわけだけど)。しかもそれがずっと頭の中を回っていたって言うのに。気付いてないって恐ろしい(笑)。

さて。
素直に認めたくない気持ちも多少あるのですが、企画ものが好きな私は、すっかりこの『SASRA』にハマっています。いま出てる小b8月号とか、モバイルサイトでインタビュー記事を読んだりとかですね…しちゃってますよ。あーもーなんかくすくす笑われてる気がしますよ、この人しょーがないなーって(苦笑)。あ、小b8月号はですね、英田兄キのも1本載ってるからそれを読みたかったのもあって買ったんですよ。もしかしたらこっちがエロとじに載ったかも知れなかったのかしら?と個人的には思いました。

Unit Vanillaインタビューでいくつか「ふうん」と思ったことなどを挙げさせて戴きますと…、
・誰が書いたのかについて
当初、読者サイドにそんなに興味を持たれるとは思っていなかったそうですが、そういった反響を受けて、じゃあお互いの癖を取り入れたりして誰が書いたかわからないように書こう、と思われたそうです。小bに載った全サの告知では、「知りたかったあの秘密が、満を持して明かされます!」などと書かれてあり、この秘密とは誰がどれを書いたかではないかと思った私は――、つまりは、それこそが「私の」知りたい秘密であるということを表す心理反射だと思いますが、まんまと全サ送っちゃうでしょうね。今回の全サは見送ろうと思っていたのに。それで違ったらさぞ私は口惜しいだろう…けど、ほんとうは明かさないままのほうが、企画としては良いと思います。知りたい気持ちもあるが、知らないままでいたい。この状態のほうがより『SASRA』に惹きつけられる時間も長くなる。深さも増す。ですよね。
・悲話安定供給システムについて
このシステム名は私の勝手な命名ですが…、ユニットの皆さんもだいたい同じようなことを言っていらっしゃいました。悲恋を書くことを意図して転生ものにした訳ではないようですが、転生ものにそういった効用があるということは共通の認識のようです。「いつもなら書きたくてもなかなか難しい」だそうです。
ほかに、歴史ものの効用にもひとつ気が付きました。戦争や殺し合い、死というものが現代よりももっとずっと身近にあるということですね。これを生かして描ければ、現代劇のハッピーエンドに慣れきったBL読者に鮮烈な印象を残せるでしょう。
・木原さんについて
普段は書けないものを書きたいですよね…というような話題の時に、
木原「書きたいもの……(考え込む)。ラブラブかなあ」
三人「読みたい!!!」

(モバイルサイトのインタビューより)(時間的にはだいぶ以前のもののようですが)
これ、拾うところでいいですよね…?

もうちょっと…、
各回についての前より細かいネタバレ感想を書きたいです。

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・プロローグ/現代
普通のBLですね。…これが普通って!自分で言って驚いた(笑)。でも、過保護でヘンなお兄ちゃんとか傍若無人豪放磊落セレブって、みんなも見たことあるよね?
まあ、これから読者を異世界に連れて行こうって言うんだから、普通のBLを入り口にして誘うのは真っ当な手段だ…とか考えてしまいました。
それから、無精髭のワイルド系キャラをカッコ良く描ける絵師さんは貴重だ、と思いました。

・第1回/古代エジプト
雑誌掲載時に既読。初見はそれなりに面白く読んだのですが再読があまり楽しくありませんでした。時々、会話や心情の動きに、ボタンの掛け違えに似たような違和感を感じるんですよね…。
本作のような父と子の確執というのは歴史ものではしばしば見かけるパターンですね。いえ、史実でも少なくはないようです。そういえば武田信玄もそうですね。そこにも切なさを感じて読みました。
セリフ回しに多少の突っ込みを入れたくはなるものの、エロとじの『媚薬』ほどには気になりませんでした。そして、意外なことに「どうか…っ…」に萌えを感じました。あと「後生です…」とかあったらヨかったなあ…。ああ、私、時代もの萌え・歴史もの萌えの素質あったんですねえ。(いまさら?)

第2回/古代中国
これ良かった…!涙出ましたもん。いまのところ本気で涙が出たのはまだ本作のみです。
私の泣き所のツボが的確に押されました。だって、ラスト、腕の中でですよ?しかも幸福感に包まれながらのフェイドアウト。これが泣かずにいられようか!私にとってもっとも味わい深い1編でした。
また、私の思考回路とわりと近い書き手が書いているように思います。鷹峻の自分への恋情を出世に利用しようとして鷹峻に身体を投げ出した紅蓮が、鷹峻が硬直しているわずかな間に「(彼が自分を好きだと思っていたのは)とんでもない思い違いだったのではないか」と、しかもそれを「恥ずかしく」思う、というところが、非常に納得する。それから、後のほうの、あのエロシーンの書き方が好きだ。具体的な手技やアヘ声の描写が少なめだが、快感に満ちた情交であることが窺い知れる。…あれっ。今日はですます調で書こうと思っていたのに、いつの間にかである調になってるよ。ま、いっか。

第3回/古代ローマ
すでに前にも述べたが、困惑に満ちた1編。(ごめんね)
冒頭部は良かったのに…!2章あたりから既視感を感じ始める。それでもまあ、しばらくはあれこれと、少なくともココは違うからいいんじゃない…というようなことを無理矢理見つけて読んでいたが、ラストに故郷の話が出て来たところで降参。"故郷"は『グラディエーター』でも核になるところだったと思う。しかもこの豊かな実りを連想させる描写はとくにそうだ。本文中ではアンドレアスの故郷はラピスラズリとそれを伝えて来た父や姉とその子供たちという"人"のイメージで描写されていたので、そのイメージを持って読むと、葡萄の収穫の話じゃちょっと「?」なのだ。親父はこういう人だ、姉貴はこういう人だ、甥っ子たちに何々を教えてやって欲しい。そうか、それは早く会いたいな――みたいなんじゃあ…っていうか、それ以前の問題か…。
戦場のシーンや闘技会のシーン、それと戦場に焦がれるルキウスの心情は充分良く書けていると思うだけに勿体無いと思う。
あと、皇帝陛下が「お亡くなりになりました」がちょっと気になる。「身罷られました」かせめて「崩御あそばされました」か…って言ってても、自分でも正しいかどうか超不安。(えー)
追記:念のため。「身罷る」であって「身籠る」ではないですよ。フォントが小さいともしかして違う部分が潰れて見えなかったりして…と危惧。

第4回/中世ヨーロッパ
再読だが面白く読めた。文章が良い。というか小説が良い。
アルフォンスの成熟した思慮に好感が持てる。レオンハルトも奔放な男だが浅慮ではない。
兵として取り立ててやったほうがこんな無秩序な盗賊団として暮らしているよりも良い筈だと思っていたレオンハルトが、過酷な最前線で横死するか生き残ってもさしたる報奨も得られぬ下級兵士の現実を、直接見てきたブリッツから聞かされたときの、あのシーンがとてもいい。しかも、ひらっと白いものが降って来て、何かと思ったら「初雪だった。」ですよ?上手いじゃん!あの雨とかと一緒でキャラの心情に沿った気象変化なだけじゃなく、物語中でも再三語られている「雪が積もるまでにはカタをつけなきゃいけない」っつータイムリミットが近付いていることを、アルフォンスにも読者にも否が応でも意識させる超便利アイテムを何と効果的に使っていることか!
あとやっぱ、何で読んでも、騎士に任じられるシーンってイイね…!萌えだ!
古代ローマ編でさした影を払ったような1編。

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実際、次、読む?ってちらっと思った。
けど、雑誌掲載時に読んだ江戸編、あれがもう一回読みたい。独特の味わいだった。ああいうBL小説、ほかでもう一度読む機会に恵まれることって、なかなかないと思う。それが次巻に載る。…まんまと予約させられてしまった私。ほぼ発売日に、某社メール便で自宅ポストに届けられるでしょう。
それまでの間に木原音瀬の本でも読んでいようと思います。

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おっと、書き忘れてる。
第4回での、アルフォンスと彼のお兄さん(次期皇帝)の関係で、源義経・頼朝を思い出しました。

あっと、も一個書き忘れてました。
第3回を読んで思ったんですけど、単に自分が知らないだけで、これってアレじゃん!っていうこと、他にもあるの?…ということが気になったりしてます。第3回が及ぼした影響というのは大きいなと。

コメント

りょう
りょう
2007年8月6日13:51

>「身罷る」であって「身籠る」ではないですよ。
わ、笑いました。「罠」のときもこっそり笑いましたが。
でも、陛下がもうちょっと(?)若ければ、「身籠る」もアリなのがBLの怖いところです……。うう…。

3巻、4巻は私も予約してしまいました。仲間がいて嬉しいです〜。

”D”
”D”
2007年8月6日17:36

>わ、笑いました。「罠」のときもこっそり笑いましたが。
えっ、マジで?そっかぁ、これ、笑い取れるんだ〜。
ボク、いたってマジメだよ?
こういう狙ってないのに取れる笑いって、真の笑いですよね〜。コメディアン冥利に尽きますね。(誰が)

陛下も「身籠る」ことができるんだったら、単為生殖で跡継ぎ作っちゃえばいいのにね。そしたら子供ッス問題も解決だ!(子供ッスは私が勝手に付けたあだ名です。)(昔、「コモドオオトカゲ」のことも子供なのに大トカゲなんだ、って一瞬間違ってたことあるんです)

全サ応募するつもりなら全四巻必要なんだから当然買わなきゃいけないのに、うっかり買うのを迷った私もアホですが。でも江戸編をもう一度読みたいのは本当です。
昔は予約という手間を嫌ったものですが、今はネット書店では、届くまでの間が違うだけで、通常購入するのと全く一緒の手順ですもんね。
また感想書きますのでヨロシク☆