『神の右手を持つ男』
2008年1月13日 読書
ISBN:4199004475 文庫 春原いずみ 徳間書店 2007/07/25 ¥580
春原さんの筆致がもっとも冴える医者ものBL。春原さんの王道。医療に関する描写もリアリティがあり、医局の権力も絡めた「医師」という職種の人間が負う宿命のようなものも見て取れる(転勤のこととか)。穏やかで繊細な受とやや野性味があって少々強引なタイプの攻、これも春原さんの王道パターンではないだろうか。
以下ネタバレ
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恋人同士だった二人が思いもかけぬ事件をきっかけに引き裂かれてしまう。二人の道がもう一度交わることはあるのだろうか?という話だと思う。BLだから最後はちゃんとひとつの道を二人で行くようになるのさ、と思いながら気楽に読む訳だが、しかしなかなかどうして揺さぶりがうまいね、春原さん。「え、だめ?」「やっぱだめ?」「もしかしてだめなの?」と思うこと再三。当て馬君も大活躍しているため、「え、ホントにそっちに行っちゃうの?」と思うこともあった。
この揺さぶりが巧かったために、若干ラストの盛り上がりに物足りなさを感じてしまったところが勿体なかった。本命君との和解のシーンよりも当て馬君との別れのシーンのほうがじーんと来てしまった。「僕は、あなたに恋をしてはもらえないんですか?」だよ?説明が遅れましたが、当て馬君は心療内科医なんですよ。人の心の機微というものを良く知り、さり気ない気遣いが自然に出来るタイプ。だからこそのセリフ。傷付いた相手にどう接したらいいかがわかりすぎるだけに、信頼は得られやすいが本当に恋してもらうことが逆に難しい…、そんなつらさを存分に味わってきた男に違いない。
あと、ちょっとタイトルが惜しい気がする。
「神の右手を持つ男」ってどんな男だと思う?おそらく、攻のほうをイメージする人のほうが多いのではなかろうか。本作はそうではなかった。「天使」かそれを連想させる言葉のほうが似合っていたような気がする。
しかし読影の天才が「御影」って名なのはそのまんまだけど上手いと思った。
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こういう病院ものを読むと、脇キャラで薬剤師が出て来たらいいなーって思う。
「あ、先生。なんで休憩時間にいつも薬局に来るんですか?医師は医局にいるものでしょ?」
「だって医局のコーヒーより薬局のコーヒーのほうが美味いんだもん」
「当然です。僕が自前でいい豆を持ってきてるんですから」
「それにこの頃ちょっと医局の空気も良くなくてさ――」
みたいな?
こういう病院ものを読むと、また病院で働くのもいいなーって思う。
春原さんの筆致がもっとも冴える医者ものBL。春原さんの王道。医療に関する描写もリアリティがあり、医局の権力も絡めた「医師」という職種の人間が負う宿命のようなものも見て取れる(転勤のこととか)。穏やかで繊細な受とやや野性味があって少々強引なタイプの攻、これも春原さんの王道パターンではないだろうか。
以下ネタバレ
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恋人同士だった二人が思いもかけぬ事件をきっかけに引き裂かれてしまう。二人の道がもう一度交わることはあるのだろうか?という話だと思う。BLだから最後はちゃんとひとつの道を二人で行くようになるのさ、と思いながら気楽に読む訳だが、しかしなかなかどうして揺さぶりがうまいね、春原さん。「え、だめ?」「やっぱだめ?」「もしかしてだめなの?」と思うこと再三。当て馬君も大活躍しているため、「え、ホントにそっちに行っちゃうの?」と思うこともあった。
この揺さぶりが巧かったために、若干ラストの盛り上がりに物足りなさを感じてしまったところが勿体なかった。本命君との和解のシーンよりも当て馬君との別れのシーンのほうがじーんと来てしまった。「僕は、あなたに恋をしてはもらえないんですか?」だよ?説明が遅れましたが、当て馬君は心療内科医なんですよ。人の心の機微というものを良く知り、さり気ない気遣いが自然に出来るタイプ。だからこそのセリフ。傷付いた相手にどう接したらいいかがわかりすぎるだけに、信頼は得られやすいが本当に恋してもらうことが逆に難しい…、そんなつらさを存分に味わってきた男に違いない。
あと、ちょっとタイトルが惜しい気がする。
「神の右手を持つ男」ってどんな男だと思う?おそらく、攻のほうをイメージする人のほうが多いのではなかろうか。本作はそうではなかった。「天使」かそれを連想させる言葉のほうが似合っていたような気がする。
しかし読影の天才が「御影」って名なのはそのまんまだけど上手いと思った。
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こういう病院ものを読むと、脇キャラで薬剤師が出て来たらいいなーって思う。
「あ、先生。なんで休憩時間にいつも薬局に来るんですか?医師は医局にいるものでしょ?」
「だって医局のコーヒーより薬局のコーヒーのほうが美味いんだもん」
「当然です。僕が自前でいい豆を持ってきてるんですから」
「それにこの頃ちょっと医局の空気も良くなくてさ――」
みたいな?
こういう病院ものを読むと、また病院で働くのもいいなーって思う。
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