どーん!
秋林さんに貸してもらった本の感想第2弾でーす。(やっとです。すいません…)
沙野センセの超モンダイ作!もしかしたら今年いちばんのモンダイ作かも…とまでは言ってたっけ、言ってなかったっけ?
このタイトルとカラー口絵からズバリ○姦がテーマとすぐわかる本書ですが、果たしてその実質は…?知りたい方は以下のレビューをお読みあれ!ネ タ バ レ ですけどね。
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話の舞台は近未来らしいですね。死刑制度が廃止された結果、日本の治安は加速度的に悪化し、増えすぎた犯罪者を刑務所に収容しきれないことから大幅に刑期を短縮された犯罪者たちが街を徘徊し犯罪を繰り返している。という設定。…この時点で「?」が点灯。つまり死刑制度が存在することには犯罪抑止力がある、という前提ですよね。少々脱線しますが、死刑があっても犯罪は増加していること、死刑になりたいという動機の犯罪者がいること(でも少数だとは思いますが)から、死刑の犯罪抑止効果は高くはない、とする意見も世の中にはあるみたいだし、死刑の是非については単純には論じられないと思います。しかしそんなものブッちぎった設定だ…。さくっと廃止にしたうえ、そしたらこんなことになっちゃったっていうのは…。
そしてその増えすぎた再犯凶悪犯罪者撲滅のための対策として国が考え出したのが狼と人の遺伝子を掛け合わせた"猟獣"。人から狼へ、狼から人へと変身が可能、人の知能と狼の高い攻撃力を持つキメラが作り出され、野犬に襲われた事故を装う形で更生不可能な犯罪者たちを狩るようになっているという設定へと繋がっていきます。すでに心の中では山ほどツッコミを入れてますが…さらに追い討ちのこの1節。「人間が人間を殺しているのが発覚したら大事になる。しかし、野犬が人間を噛み殺しても、問題はない。(p115)」…問題あるだろ!?このモンダイ作のどこがモンダイって○姦じゃなくてもしかしてココ!?っつーくらいにびっくりして、いくら「多少ヘンな設定でも丸呑みして読むぜ」な気持ちでいてもけっこーキビシイ…はっ。まさかココでモラルぶち壊しとけば○姦くらい大したことないって思わせることが出来るっていうテだったりする?
さて、感想はここから書き始めても良かったのかも知れませんが…、そんな"猟獣"として生を受けた攻が、子犬(子狼?)の頃、施設を抜け出したときに傷付いた自分を救ってくれた受のもとへ成長してから会いに行く、というか愛を乞いに行く、というお話です。紆余曲折あって結ばれる二人ですが、獣化・人間化を繰り返すたびにすさまじい負荷が掛かるため短命(*)な猟獣である攻は、次第に弱っていってしまいます。理性も失いやすくなり、ついには獣型から人型に戻ることができなくなって処分の対象とされる。受との愛ある日々はひとときの夢だったのか――。そしてもともとの本作のテーマだったはずの○姦。それを、獣を性的な対象として愛せるかどうか、ではなく、人として愛し合った相手が獣になってしまったらそれを受け入れられるかどうか、という視点から描いていることで、一気にBLとして昇華している感すらあって、私はこの○姦はアリだと思ってしまった。あと、こういったキメラものによくあるマッドサイエンティストが出て来ないこと、獣の美しさの描写があまり目立たないこと(例えばこう、月の光の下で爛々と目を輝かせる獣と対峙して動けなくなる的なシーンがないとか)も、獣そのもののエロスを強調しないからBL色が濃くなって、アリかもと思わせるのにプラスしているのかなあ?などと考えたりしました。
…という訳で、ナシだけどアリ、アリだけどやっぱナシ?…な、なんともひとくちでは語れない作品でした。
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(*)ここで『闇のパープル・アイ』(篠原千絵/小学館)を思い出しました。その基本設定が同じ…いえ、真似ているという意味ではなく、変身の生理として王道というか、そうなるよねってことで。『闇の〜』のほうはもっと獣が色っぽく描かれていますよね。○姦はないけど。…また読みたくなっちゃった。
秋林さんに貸してもらった本の感想第2弾でーす。(やっとです。すいません…)
沙野センセの超モンダイ作!もしかしたら今年いちばんのモンダイ作かも…とまでは言ってたっけ、言ってなかったっけ?
このタイトルとカラー口絵からズバリ○姦がテーマとすぐわかる本書ですが、果たしてその実質は…?知りたい方は以下のレビューをお読みあれ!ネ タ バ レ ですけどね。
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話の舞台は近未来らしいですね。死刑制度が廃止された結果、日本の治安は加速度的に悪化し、増えすぎた犯罪者を刑務所に収容しきれないことから大幅に刑期を短縮された犯罪者たちが街を徘徊し犯罪を繰り返している。という設定。…この時点で「?」が点灯。つまり死刑制度が存在することには犯罪抑止力がある、という前提ですよね。少々脱線しますが、死刑があっても犯罪は増加していること、死刑になりたいという動機の犯罪者がいること(でも少数だとは思いますが)から、死刑の犯罪抑止効果は高くはない、とする意見も世の中にはあるみたいだし、死刑の是非については単純には論じられないと思います。しかしそんなものブッちぎった設定だ…。さくっと廃止にしたうえ、そしたらこんなことになっちゃったっていうのは…。
そしてその増えすぎた再犯凶悪犯罪者撲滅のための対策として国が考え出したのが狼と人の遺伝子を掛け合わせた"猟獣"。人から狼へ、狼から人へと変身が可能、人の知能と狼の高い攻撃力を持つキメラが作り出され、野犬に襲われた事故を装う形で更生不可能な犯罪者たちを狩るようになっているという設定へと繋がっていきます。すでに心の中では山ほどツッコミを入れてますが…さらに追い討ちのこの1節。「人間が人間を殺しているのが発覚したら大事になる。しかし、野犬が人間を噛み殺しても、問題はない。(p115)」…問題あるだろ!?このモンダイ作のどこがモンダイって○姦じゃなくてもしかしてココ!?っつーくらいにびっくりして、いくら「多少ヘンな設定でも丸呑みして読むぜ」な気持ちでいてもけっこーキビシイ…はっ。まさかココでモラルぶち壊しとけば○姦くらい大したことないって思わせることが出来るっていうテだったりする?
さて、感想はここから書き始めても良かったのかも知れませんが…、そんな"猟獣"として生を受けた攻が、子犬(子狼?)の頃、施設を抜け出したときに傷付いた自分を救ってくれた受のもとへ成長してから会いに行く、というか愛を乞いに行く、というお話です。紆余曲折あって結ばれる二人ですが、獣化・人間化を繰り返すたびにすさまじい負荷が掛かるため短命(*)な猟獣である攻は、次第に弱っていってしまいます。理性も失いやすくなり、ついには獣型から人型に戻ることができなくなって処分の対象とされる。受との愛ある日々はひとときの夢だったのか――。そしてもともとの本作のテーマだったはずの○姦。それを、獣を性的な対象として愛せるかどうか、ではなく、人として愛し合った相手が獣になってしまったらそれを受け入れられるかどうか、という視点から描いていることで、一気にBLとして昇華している感すらあって、私はこの○姦はアリだと思ってしまった。あと、こういったキメラものによくあるマッドサイエンティストが出て来ないこと、獣の美しさの描写があまり目立たないこと(例えばこう、月の光の下で爛々と目を輝かせる獣と対峙して動けなくなる的なシーンがないとか)も、獣そのもののエロスを強調しないからBL色が濃くなって、アリかもと思わせるのにプラスしているのかなあ?などと考えたりしました。
…という訳で、ナシだけどアリ、アリだけどやっぱナシ?…な、なんともひとくちでは語れない作品でした。
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(*)ここで『闇のパープル・アイ』(篠原千絵/小学館)を思い出しました。その基本設定が同じ…いえ、真似ているという意味ではなく、変身の生理として王道というか、そうなるよねってことで。『闇の〜』のほうはもっと獣が色っぽく描かれていますよね。○姦はないけど。…また読みたくなっちゃった。
コメント
コレ出したリンクスすっげー!と、南風さんと話しましたもの(コメント欄で)。
正直、私は沙野さんの文章や語彙の選択があまり好きではなくて、タイトルの付け方含め、もうちょっと垢抜けてくれないかな〜と毎回思うし(だから私は、鬼畜系では沙野さんよりイマドキな松田美優派なんでしょう)、この作品も…なんていうか…設定の弱さや甘さや脆さ、それらを「意外と純愛」でカバーするゴーインさが気になりました。つまりDさんが指摘されているとこなどまさにそうというか、ソコが実はポイントのひとつだったりするんじゃないかと。
そして、私が力説する「沙野さんには実相寺紫子さん」だったのでニヤリ!でした。
ちなみに、私がこの作品を読んでいてしょっちゅー思い出したのは、麻木&道原コンビによる「ジョーカーシリーズ」ですね。
でもコレ読んでよかったー!こーゆー果敢にチャレンジしてくる(でも意外にストーリーは「鶴の恩返し」な純愛王道)作品って、好き嫌いとは別次元、好奇心の塊な私にはウェルカム!です。
私も、この"猟獣"の設定をもう少し、もう少しでいい(*)からキチンと作ればもっとキレイな話になるのになー…なんて思っていたのでした。だって、確かに「意外と純愛」だけどその純愛もなんだか俗っぽい気がしちゃったんだもの…いや、でもそこがBLとしての読みやすさを生み出しているのかしら…。不思議だ。小説としての短所と思えるようなところがBLとしてのプラス要素になっているような気がして来てしまう。
(*)というかこの"猟獣"の設定を作り込めば込むほどBL度数が下がっていってしまう気がします。でもBLとして良い出来を保ちつつ"猟獣"の設定がもうちょっときちんと出来るラインというのはどっかにあると思うんですよね…。
そこんとこどうしても気になっちゃうな…というか、読んでて「問題あるだろ!?」と思った時点で私は、作者さんの社会倫理におけるバランス感覚をけっこう危ぶんだので、性倫理についても心配になり、どんな獣姦を読まされるのか…とはらはらしたんですよね。
ところがなかなかどうして「純愛」じゃないか!と軽く感動すら覚える純愛が描き切ってあるだけに、勿体ないんじゃない?という気がしてしょうがなかったですね。
貸してもらわなかったら読むことのなかった作品だと思うので、良い体験をさせていただいたと思います。ありがとうございました!
ちなみに、私も「ジョーカーシリーズ」は全部は読んでないけど、一時期ウイングスを買ってたから読んでました。女のコの時のジョーカーも可愛いけど、それよりも男ジョーカーに押し倒されるリィンに萌えてたなあ。