へい、お待ち!秋林さんに借りた本の感想第3弾でーす!って遅!姐さんすいませんっス!

蒸し暑い日の夕暮れに縁側でうたた寝する主人公の描写から本文がスタートし、"家族"というのがひとつ大きなキーワードとなっている本作は、まさにいまの時期に読むのにうってつけだと思います。厳密に言うと、作中の季節は梅雨明け直後〜夏休み前のようなんですけどね。
私もゆっくりお休みの日で、こんなふうに色々ちょうど良いタイミングで読みに入ったにも関わらず、私にとっては読み難い文章に感じられ、意外に読了まで遠かったです。なんつうか、単語のチョイスがちょっと違うと感じるのですよ。たとえば「密接な空気が流れる」って所なんかは、「濃密な」じゃない?「密接な」だったら「関係」とか「つながり」とかに係っていくのが自然じゃない?…なんてことがしょっちゅう気になってしまって、文章自体から読み取れるものが少なかったように思います。しかしながら、その場のシチュエーションと前後のストーリーの流れから読み取れる部分が大きく、総合的にこの話は面白い、と結論付けることが出来ました。どうしてそんな感想を持ったかっつーのを、これからネタバレも含みつつ書いてみたいと思いますのでよろしく。

 
 以下 ネ タ バ レ あり。
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主人公の受が、攻に強引に手篭めにされ、受は攻を恐れながらも関係を続けていくうちに攻を好きになっていってしまう、なんていう話はBLとしては全然ありふれている。その受と攻が兄弟だったとしても、全然珍しくない。それなのに他のBLと大きく違うように感じるのは、秋林さんの言葉を借りれば、「リアルなヤンキー系のイマドキのにーちゃんたちが描かれている」からかも知れない。主人公の日向(ひなた)は、17歳の高校生で、髪を金髪にし、バイト先の上司をウザいと思っていたり、深夜の公園で友達とつるんでいたりするところが本当に今時っぽい。また、父親のいない家庭で母親と年の離れた兄二人に育てられて来たため、ちゃっかりしていて甘え上手、現在の恋人は高校の女教師、なんてオプションも付いている。そんな、順風満帆でありながらもそれをちょっとかったるく感じているような日向の日常生活もある日、兄の龍昇(りゅうしょう)の凶行によって一変してしまう。龍昇に怯えながらも体を重ねるごとに快感が増して行く自分に戸惑う日向。しかし体はそうでも心では兄を拒否しているつもりでいたのに、ある時、日向は否応なしに自分の本当の気持ちを自覚する。…。ここですよ、ここ!ここが上手いと思った!このなんつうの、変曲点みたいなとこ!どこかって言うとですね、実は龍昇には3年もの付き合いになる彼女・さくらがいて、そのさくらと龍昇と日向と3人、自宅で食卓を囲むシーンです。何も知らないさくらを目の当たりにしているうちに苛々がつのって来て、さくらからの、恋人の有無に関する追及のしつこさについ「うるせえな!」と声を荒げてしまう、っていう所ですよ。日向の感情の動きが見事に表されているシーンなんです。って私も口調が変わっちゃったな(笑)。また、このシーンに至るまでの前振りが丁寧に組まれているからこのシーンが凄く生きる訳で。さくらの登場の仕方といい、日向たちが暮らす家や庭や、そのときの季節の描写といい、頭の中にその情景が自然に思い浮かんでいるから、このぎくしゃくした食卓のシーンもリアルに感じられる。ただやっぱりここでも文章自体にはちょっとひっかかり続けている私ではあるのですが…。
で、ここからですよ。これから日向、どうすんの?どうなんの?と思いながら読んでいく訳です。だいたいの手篭め系BLでは攻への気持ちを自覚した後も、受って比較的受身のまま待ってるだけのパターンが多いと思うのですが、日向は違います。日向とは対照的にいい加減自分たちの関係はヤバイと感じていた龍昇は日向を遠ざけ始めますが、今度は日向から気持ちをぶつけていく展開になり(しかも日向も自覚したらいきなり全開というわけでなく、自覚したあとも、すぐ全部受け入れられる訳でもなくて、ちょっとずつスロットルを開けていく感じなところがらしくて上手いと思います)、最終的には龍昇も結局日向に引き戻され落ちてしまう、というところでお終い。私もこれで終了でいいと思います。決着がついたところで、それが一番最後のオチでいいと。BLではよく、お互いの気持ちが通じ合った後もうひとエピソードつけて甘く終るものが多いですが、本作にそれは合わない気がします。

書かれ方に多少気になる点を残しますが、ストーリーやエピソードそのものは良く練られていて面白いです。中盤ちょい過ぎの変曲点のシーンまでは耐えて読んでください、な作品。だと思います。

余談ですが、ドラマCDになるとしたら(まだなっていないようです)、と考え、声をイメージしながら読んでみた。その私的キャスティングは…、日向がスズ、龍昇がこにたん、長兄は一条和矢か森川智之。

コメント

秋林 瑞佳
秋林 瑞佳
2008年8月18日22:08

>単語のチョイスがちょっと違うと感じるのですよ。
たぶん…単語と単語の間(と変換したら、まず「英田」って出たよ…)に入れるべき単語を端折ってるのかな?足すとわかるんですが…私もしょっちゅーやるんですよね。頭の中で出来上がってるんですけど、途中、言葉を端折っちゃう。ここらへんの感覚は、わかる人にはわかるんだろうなあ。もちろん「わかる人」≠「正しい人」です。

松田さんは誰にも似てない…既成作家に影響されてないなあと思います。

あとはちゃんとプロット練ったストーリーというものが書けるようになったら、もっと推せるんだけど…。

”D”
”D”
2008年8月19日19:52

>足すとわかるんですが
?…うーん。そうですか。残念、私はわからない人みたいです…。
その割には、加藤家の風景とか、夏の空気感とか、夜の公園で遊ぶ高校生のいまどきっぽさとかが結構リアルに感じられたので、不思議です。

秋林 瑞佳
秋林 瑞佳
2008年8月19日22:42

私もわかんない人います。
あの作家さんはわかんないな〜って、いつも思います。で、私の場合、なにが書かれているか読了してもわかんないんですよ。たぶん相性なんでしょう、うん。

奈央
奈央
2008年8月20日20:20

空気読まずに割り込み割り込み。
わたしもそのキャスト熱烈希望です!
そんな感じ!はすっぱ乙女とヤクザみたいなそんな感じ!

”D”
”D”
2008年8月20日20:41

秋林さん>
そうですね、いろんな作家さんがいて、相性も色々ですよね、うん。

奈央さん>
お、キャスティング案が奈央さんにささった(笑)ほんとに、こにたんの低音が合いますよね、これは。

秋林 瑞佳
秋林 瑞佳
2008年8月20日21:28

>はすっぱ乙女とヤクザみたいなそんな感じ!
大笑いしてしまった…たしかにそんな感じ♪