『秘書とシュレディンガーの猫』榎田尤利
大洋図書(SHYノベルス)
新書 大洋図書 発売:2008/12/22 903円

読んだよ。

以下、  ネ タ バ レ だよー。

かなりネタバレだよー。

本当にネタバレだよー。

がっつりネタバレだよ。
 
 
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凄く、普通にBLとして面白かったです。読みやすくて甘くて、やっぱBLっていいね、って満足できた一冊でした。やっぱ純愛でしょ、とね。帯の「堅物の秘書さんに、俺が人生の楽しみを教えてやる」は嘘ですね。純愛でした。と思いました。

そんでやっぱ猫はいいね…。
猫、と聞いて、その性格・性質について抱くイメージは人によって若干の差異があると思いますが、エダさんはさすがに猫好きなだけあって、本作中の"猫"はみんな濃ゆいですね。特にやっぱ、シュレディンガーはいい。毬崗老がちょっとずつちょっとずつシュレディンガーにいろいろなものを与えていく過程の描写など読んでいてたまりませんでしたね。
猫好きが猫を好きな理由は数あれど、エダさんの思う「猫のここがイイ」と思うポイントはどうやら私と近いようです。

確かにシュレディンガーの正体はわかりやすすぎるんですけど、そこはやっぱ早めにわかってその後の展開にはらはらする視点に移行したほうがこの小説を楽しめるのかなって思いました。

エダさんも、サイエンスちっくなネタがお好きなようだとは以前から思っていましたが、どちらかというとサイエンスの中でも生物学方面に偏っているように見受けられたので、今回の物理学分野からのシュレディンガーの引用にちょっと新鮮な感じを受けました。
余計なお世話ですよね、済みません。

ホントにホントに余計な話ですが、私が卒業した薬学部では、最初はまあ、普通に「物理学」は「物理学」で習うんですよ。それが学年が上がるにつれて「物理化学」が出てきて、そのうち「生物物理化学」っていう科目が出てくるの。最後のほうはもうだいぶ意味がわかんなかったです…。いや、最後のやつは選択科目だったような気がする…(勉強した記憶がないから)。

エダさんはやっぱり生物学方面の人でしょ、と思ったのは序盤でラントシュタイナーの名前が出てきたところですね。手元の本では26ページです。ふつうこの場面でこの名前引っ張ってこないよなー…と思いながら読みました。
ラントシュタイナーさんは、確かに血液型の研究をした人でして。

えっと、A型、B型、とかってどこで決まるかっつうと、赤血球の表面に持つ抗原の種類によって決まるんですね。A抗原を持ってるとA型、B抗原を持ってるとB型、AとB両方持ってるとAB型、どっちも持ってないとO型です。
さて。異なる血液型の血液同士を混ぜると基本的に赤血球凝集反応が起きますが、これ、抗原抗体反応なんです。…と、いうことは、抗原だけじゃなくて、抗体もいないと起きない反応な訳です。A型の血液にほかの型の血液を混ぜて凝集するってことは、ほかの型の血液中にはA抗原に対するA抗体があるから。A型血液中には勿論A抗体は存在しない。この、血液を混ぜて凝集するかしないかっつうことから、抗原と抗体の存在の仕方がオモテ・ウラ的な関係にあることを示したのが「ラントシュタイナーの法則」っつうんですよ。(ラントシュタイナーはそこから、血液型の存在を指摘したんじゃなかったかと)。私はそれでこの名前を知ってました。
ちなみにこの法則でいくと、A型血液中にはA抗原とB抗体があり、B型血液中にはB抗原とA抗体がある。AB型血液中にはA抗原およびB抗原があり、A抗体もB抗体もない。で、O型はどうかというと、A抗原B抗原はないけど、A抗体とB抗体がある。よく、O型の人は他の全ての型に輸血できる、ってフレーズを耳にしますが、それは赤血球だけの話なんです。赤血球の表面上に抗原があって、それ以外の血液成分中に抗体がある訳ですが、O型の人の、このA抗体・B抗体を含む、赤血球以外の血液成分の部分は、やっぱりほかの血液型の人には輸血できないんですよ、っていうお話…。うわーややこしいな、自分で書いていても。うまく伝わるかな。適宜スルーしてくだされば…と思います。

ま、そんな訳で。
またしても本編の感想以外の部分が多い感想文でした。

コメント

りょう
2009年2月12日21:50

BL的にも面白いですよね~。甘くて読みやすいといいますか。
でもサイエンス的には物足りないのでは?と思っていたら、ご自分でしっかり補完?されてますね(笑)

>O型の人は他の全ての型に輸血できる、

確かによく聞きますが、これはどういうことなのかという説明は聞いたことがなかったので興味深かったです。O型がオールマイティーに輸血できるなら、O型の人はもっと献血するべき??とか、漠然と疑問に思っていたのですが、なんとなく分かった気がします。ありがとうございます~。

ところで「生物物理化学」って恐ろしい科目ですね…。1教科でもギブアップなのに3倍になって襲い掛かってくるようなイメージで、なんだかもう想像がつきません(笑)

”D”
2009年2月13日0:41

不必要なサイエンスを絡ませてないからこそ、普通にBLとして面白いのかなって。
でも、あそこで例えばもっと有名であろうパブロフの犬とかを持って来ないで
「…血液型の研究?」「それはラントシュタイナーよ」なんて出してくるあたり、やっぱエダさんだってココ突っ込んで欲しいんでしょ!?――って思うのはまあ私の勝手ですけどね(笑)。

輸血に関しては、このラントシュタイナーの法則は、原則、というか原理的なものですね。異なる型同士で輸血が出来るのか、っていう基本的な部分で。
現在は全血(採血したそのままの血液)を輸血するってほとんどないそうです。でもするとしたら、この全血輸血のときは、完全に同じ血液型じゃないとだめだよって話。
でもって現在医療現場でホントに使われてる輸血は、赤血球だけ、とか血小板だけ、とかそういう風になってるんですね。んで、O型の赤血球だけになってる製剤は、ほかの型の人にも輸血することは実際には可能で、救急現場で血液型判定をする時間も取れないほど緊急のときはとりあえずO型赤血球を輸血することはあるんだそうですよ。そんでそれでつないでる間に改めて血液型判定をするらしいです。その後も輸血が必要なら、ちゃんと合ってるやつを使うのが原則らしいですよ。「らしい」ばっかで済みません…。

「生物物理化学」はホントに、恐ろしい科目…だったのでしょう。私の記憶に残ってないですから(笑)。「物理化学」は確か必修だったと思うので…、卒業できたってことは単位も取れてたはずですけど…。…。