『交渉人は愛される』榎田尤利 (SHYノベルス)
新書 大洋図書 発売:2011/07/29 945円


以下、ネタバレを含みます。


--------------

いちばん印象に残ったセリフが「閉めてね。零れるし」でした。
絶妙なひとことだと私は思いましたが(笑)。

この巻で一区切り、ということだそうで、かっちり"完結"って訳じゃないことにはちょっとホッとしました。でもここらで一旦、ていうのには賛成です。なんか、うまく言えないけど。前作でなにか、一周したというか、ひと山超えたというかそういう感があったので、区切りがついたほうが自然に感じるというか。


万里雄って、どうなるんでしょうね。
彼は変われるんでしょうか。
(しかし、作者・榎田さんの現時点での解答は「No」のように、私には見えます。…、いや、やっぱりわかりません。うん、いろんな可能性がありますよね)

おじさまたちが活躍した巻でしたね。
鵜沢パパでしょ、座木でしょ、周防さんでしょ、伯田さんでしょ、あと、山本さん。ほら、鵜沢氏の側近の山本さんですよ。なんかいいですよね。執事みたいで。
伯田さんは、今回、出番少なかった気がしてちょっと残念。
周防さんは、いいとこ持って行きましたよね。ああ。周防さんとクリームあんみつご一緒したいなー…。
座木はなかなかの役者だったけど、結局芽吹の交渉に応じることになりましたね。
鵜沢氏には、正直、ぐっと来ちゃったなー。まあ親バカですけど(笑)。けど、なんていうのかな、自分の死に臨んでの姿勢というのかな、覚悟決まってる感みたいなのがあった気がする。

キヨ、要所要所でカッコ良かったですよね。頼れる。バイト料上げてあげてー。
私的には今回、「閉めてね。零れるし」がいちばんカッコ良かった!(笑)

今回は、芽吹と兵頭の間にそんな溝といえるようなものも発生しなかったし、芽吹が精神的にヤバイとこに落ち込んじゃうこともなくて、その点では気楽といってはなんですけど、そんな心配な気持ちにならずに読めました。
まあ、万里雄引っ張って座木のところに乗り込むシーンはだいぶ山場でしたけど。あそこのシーン、ほんと、平川さんの芝居で聴きたい!と痛切に思いましたね。「ふざけてねえよ!」、ぜひこれを平川さんに言ってほしい!

最後はほんと、ラブラブでしたねー。いいシーンだった。口絵もきれいでした。木目が凄い…あれって手描きなんですかね?

あと、表紙の芽吹のベストは…、ああいうデザインなの?それとも、芽吹らしく、前後ろに着ちゃったところを描いたの?
いずれにしても、ほんと、よく描きこんであって、さすがの画伯でした。

いつの日かの再開(または再会)を、気長に待ちたいと思います。


コメント

りょう
2011年8月15日12:19

>前作でなにか、一周したというか、ひと山超えたというかそういう感があったので、

同感です。シリーズとしては前作がクライマックスで、今回はエピローグという感じがしました。続けるにしても、1つ区切りがあったほうが作品が締まりそうです。

>しかし、作者・榎田さんの現時点での解答は「No」のように、私には見えます。

私もそう思いました。他の作品でも改心しないキャラがいましたし、そういう点に関してはシビアな書き方をする作家さんだという気がします。

表紙といえば、下のほうに描かれているのは元牧師(?)さんなんでしょうか。
ちょっと気になってます…。

”D”
2011年8月15日21:13

こんばんわ~。
今日も暑いですね。思わず帰りにみつ豆の缶詰(抹茶寒天入りの缶詰を見つけたんですよ!)とつぶあんの缶詰とアイスクリームを買ってきちゃいました。うちでクリームあんみつに合成するの。

> 私もそう思いました。他の作品でも改心しないキャラがいましたし、そういう点に関してはシビアな書き方をする作家さんだという気がします。

うーん、そうなんだけど…、それでも何も問題はないんだけど…、「交渉人シリーズ」としてはこれでいいの…?という、疑問が私に残るってゆーかなんていうか、うーん…、人間の変化を描き続けてきた交渉人シリーズなのに、ここで、このタイミングで万里雄をこのまま放り出しちゃうんだ…、という感想を持ってしまったというか。それとも、いつかの続編につながっていく伏線なのかなあ…と考えたりもして。

万里雄にしたって…、虫けらのように無価値な命として殺されかけて、そんな自分の命に唯一価値を見出してくれる父親を失って、それで何を思ったんだろうか。それでもやはり現実を受け入れられないんだろうか。改心するって方向でないにしてもなんかしら変化は生まれるんじゃないか。それでもやっぱりだめなのか。

なんか、そういうこと取り留めなく考えちゃうんですよね、読み終わってからというもの。これはほんと、鵜沢氏に影響を受けちゃったんでしょうね、きっと。いつもは変わろうとしている奴を信じるのは芽吹の役目でしたが。

普段は、私はどちらかというと兵頭の「どうしたって変われない奴もいるんです」を支持したい派ですが、今回は鵜沢氏にほだされたんですかねえ。万里雄について「こいつはダメだ」と思いつつも、どこかに可能性は残っていないのかと探してしまってるんですかねえ…。

長くなりまして済みません。


> 表紙といえば、下のほうに描かれているのは元牧師(?)さんなんでしょうか。
ちょっと気になってます…。

私も最初そう思いましたが、その隣にもう一つ頭があるので、ケイとフミちゃん?…と思ったけど、よく見るとさらに葉っぱの間に頭が見え隠れするので…、???舎弟たち?結婚式の帰りかな?(だったらケイ&フミじゃおかしいし…)。
…見れば見るほど気になるところが沢山ある表紙ですね。(笑)

りょう
2011年8月16日21:10

>その隣にもう一つ頭があるので、ケイとフミちゃん?…と思ったけど、よく見るとさらに葉っぱの間に頭が見え隠れするので…

気付いていませんでした…。3人もいたんですね!
うう~ん、舎弟なのか?? ますます謎が深まりました(笑)

>どこかに可能性は残っていないのかと探してしまってるんですかねえ…。

そういう視点で、万里雄のその後について語られた部分をちょっと読み返してみたのですが、希望がまったくないわけじゃないのかな、と思い直しました。
ころころ意見が変わって、すみません……。
親の死に目に会えなくてもいいと言ってた万里雄が、四十九日の間は東京にいたわけですし、変化はあったんだと思います。芽吹は今回も、「奴が変ろうと思えば変れるでしょう」と言っています。
でも、このシリーズでは「人が変化する」ということについて、簡単なことではない、とても努力が必要ということも描かれてきていたと思います。
つまり、万里雄をそう簡単に…たった数週間で改心させられないんだと思います。
きっと芽吹に対して作ってしまった「とてつもない借り」を返しに来る日もあるんじゃないでしょうか。小説の中ではそこまで語られないかもしれませんが、そんな読み方もできるな~と。
また1作目から読み返したくなってきました。

”D”
2011年8月17日20:52

> うう~ん、舎弟なのか?? ますます謎が深まりました(笑)

伯田さんだといいなあ~~(笑)

> そういう視点で、万里雄のその後について語られた部分をちょっと読み返してみたのですが、希望がまったくないわけじゃないのかな、と思い直しました。

うんうん、そうなんですよね。四十九日が済んで失踪したっつー事実のみがわかるだけで、どうとも取れる書かれ方なんですよね。ただなんとなく、全体を通して読んだ印象として、エダさんは万里雄はダメだと思っているんじゃないか、っていう感想を持つというか。でもはっきりダメとは書いてしまわないでいる、みたいな。

> ころころ意見が変わって、すみません……。

いえいえ、考えていくうちに変わっていくものだと思います。私もよく変わります(笑)。

> このシリーズでは「人が変化する」ということについて、簡単なことではない、とても努力が必要ということも描かれてきていたと思います。
つまり、万里雄をそう簡単に…たった数週間で改心させられないんだと思います。

そうですね。借りの大きさから言ってもまだ、合わせる顔がないくらいな時期でしょうし…。
そしてその努力…、ごめん、ほんと、言っちゃ悪いんだけど、万里雄に努力って言葉が似合わな過ぎるんですよね、いままでの万里雄を見る限りでは。でも、これからの万里雄は…どうなるんでしょうね…。

> また1作目から読み返したくなってきました。

いいですね、万里雄の大活躍ぶりをまた読み直すのも。(…え?)