東方美人(オリエンタル・ビューティー) (幻冬舎ルチル文庫)
かわい有美子
幻冬舎

文庫 幻冬舎 発売:2014/01/17 650円

りょうさんのレビューを見て、…ついに(ていうかいつの間に)完結したんだー‼と、思って読みました。
こっちの表紙のアレクセイが好きなので、こっちの画像を載せました。ちょっと顎上げすぎかなあと思いますが(そのせいでなんだかツンとして見えて、彼らしい優しさが感じられないですが)でも格好いいし、背が高いからたぶん、顎を引いていても下から見たらこんな感じなんですよきっと。



以下ネタバレあり。

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オリンピックでロシア絡みはタイムリーだなー…と思っていたら、そのうちにウクライナ情勢は緊迫してくるし、北朝鮮拉致被害者関係のニュースもあったりして、なんだかいろいろ考えました。(サエキの境遇は、拉致被害者と似てなくもないし。)

読んでて、ホントはいろいろ突っ込みたいところがありました。それと、かわいさんのセリフの癖が、けっこうひっかかったのですが(極端に述語を省いたセリフが多いのです。「隣に座っても?」とか、「~の意味を?」とか、そういうのが気になりました。これは旧版の時から思ってたけど)、でも全体としては話は面白いし、何よりキャラクターが魅力的です。サエキも結構好きだけど、とくにアレクセイがいい。アレクセイを好きにならない人間はいない、と作中でも書かれていますが、そんなの、読者だってそうでしょう。私はかわいさんの小説はこれとあともう1作しか読んでないですが、かわいさんの書く攻って、こう、慈しみ深いというか、慈愛に満ちてるっていうのかな、そういう感じがとてもぐっときますし、とても癒されます。

あと、絵本でアルファと連絡を取り合うエピソードがたいへん良かったです。見返しをそっと剥がすと現れる手書き文字…ぐわー。感動した。サエキにいちばん感情移入できたシーンだったかも知れない。絵本、っていうアイテムもアルファの親心を感じさせますね。アルファについてもうちょっと知りたかったな。

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ところで、アフガニスタン行きのくだりについては、私なりの考察があります(笑)。まあ、お聞き(読み)流しいただければ幸いです。はっきり言ってたわごとです(笑)。

つまり、教授の作為ですね。サエキが邪魔になったのでしょう。いろいろ自分の周囲を嗅ぎまわっているようだし。戦地に飛ばして、そのまま戻ってこなければラッキー、程度ですかね。アレクセイについても既にサエキに取り込まれたものとみなしていた可能性もあります。だから一緒に行かせた。また、軍歴からいってアレクセイだけ戻ってくる可能性も一定以上ある。その場合は再教育のチャンスと考えることができるかも知れない。…ところがサエキだけ戻ってきたので内心ちっ、とか思ったでしょうね。
よくわからないのがアルファの立ち位置ですが、モスクワにいて、教授よりも上の地位にいる可能性を考えてみます(ただし直属の上司ではない)。そうすると、アルファの息がかかっているサエキを簡単には始末できないっていうのが教授の立場なのかな。ベルリンにいる間は迂闊なことは出来ない。でもアフガニスタンにやっちゃえば、何が起きても不慮の事故。

サエキがアフガニスタンで禁じ手を使った(…と、いうか大失態をやらかした、とも言えると思いますが)後、ベルリンに戻ったのには驚きました。危ないでしょ!? あれをやっちゃったらもうKGBにはいられなくなるのでは?のこのこベルリンに戻ったら、不自然な交通事故に遭ったり、酔っ払いに絡まれて地下鉄のホームに落っこちちゃったりするんじゃないの?もしくは速攻でモスクワに呼び出されて失態の追及を受ける破目になったりとかしそうだけど。
いや、逆にそこはふてぶてしいほどの図太さでもって(事故に遭わないよう細心の注意を払いつつ)ベルリンに帰り教授にトドメをさしてから女王陛下の庇護を求めるっていう筋書きだったとも読めますね。まあトドメが刺さったかどうかまでは作中には書かれてなかったですが。

…と、いうふうにいろいろ考察することができてそれも楽しかったですが、サエキとアレクセイが甘ったるいほど仲良くおちつくラストに満足して、ああやっぱり私BLが好きなんだなと、そう思った次第です。

まあそんな訳で。



コメント

りょう
2014年3月18日0:08

おお~、読んでる方がいらして嬉しいです♪
再版された思ったら、サクッと完結してしまって驚きました。
私もアルファのことが気になりました。それなりの地位についてそうですし、ベルリンの壁崩壊に向けて暗躍したんでしょうか。でも、サエキに関わる人の中ではアレクセイの次に甘そうな気がします。絵本のエピソード、素敵でしたね。

サエキがアフガニスタンからベルリンに戻って、わざわざ教授に会いに行ったのには驚きましたね。え?始末されないの?とヒヤヒヤしてしまいました…。

”D”
2014年3月18日20:24

私もそこは「まさか!」と思いましたけど、あー…、それはきっと、あれなんですよ、少佐だからとか、モスクワに強力なコネがあるとか、きっとなんか実はサエキはすっごいVIPなんですよ。こう、ちょっと簡単には始末されない人なの。教授の下では一見ただのヒラ情報員みたいに扱われてるけど、実はね。なのでそこを敢えて、ベルリンに戻って、堂々と暗躍して(堂々としてたら暗躍じゃないって)やってのけられるくらいすごい優秀なんですよ!(笑)。
超・こじつけでした。

ほんと、りょうさんのおかげで再版を知ることができましたので、お礼を申し上げます。ありがとうございました。